この作品は、2012年5月に東京佼成ウインドオーケストラが行った演奏旅行のためにスパークに委嘱されました。

　そのツアーで訪れたエリアには、前年の2011年3月11日の東日本大震災で津波被害を受けた地域が含まれたため、曲の中間部に日本でもしばしば演奏される自作の『陽はまた昇る』(復興支援のための大きな資金を作った)からの引用があります。

　初演は、2012年5月24日(木)、仙台市泉区のイズミティ２１で開催された「東京佼成ウインドオーケストラ仙台公演 兼 宮城県吹奏楽連盟主催 2012年度全日本吹奏楽コンクール課題曲講習会」で、大井剛史(おおい たけし)の指揮で行われました。

　単一楽章の作品で、大きく分けると3つの部分で構成されています。

　曲冒頭はヴィーヴォで、輝かしいオーケストレーションとシンコペーションの動きに特徴づけられる楽観的なムードで始まります。快活な木管楽器の動きが、ホルンやユーフォニアムによるコラールのようなファンファーレとコントラストをなし、目まぐるしく展開します。

　中間部は、レント・コン・モート。短いブリッジをへて、アルト・サクソフォンが"陽はまた昇る"のテーマを奏で始めます(この部分のスコアには、英語で THE SUN WILL RISE AGAIN と印刷されています)。原曲を知る人々は、ここで大いに泣かされますが、その後、このテーマは美しい響きの中、大きく展開していきます。
　　
　ラスト・セクションは、再びヴィーヴォ。木管はシンコペーションで特徴づけられる動きとエネルギーを取戻し、金管によるファンファーレと交錯しながら、輝かしいコーダへと向かっていきます。

　原題の“Looking Up, Moving On”には“上を向いて、前を向いて”という大意があり、未曾有の震災を体験した日本に向け、“どんどん前へ向かって行こうぜ!”という作曲者からの激励のメッセージが込められています。

　都会的センスとリリカルさがミックスされ、かつての『ダンス・ムーブメント』や『セレブレーション』などと共通する、作曲者のキャラクターが全面に押し出されたたいへん演奏効果の高い作品です！

　8分以内という演奏タイムもとても使い勝手がいい。

　スパーク・ファンならずとも、ぜひとも取り組んでみたい作品です!

【フィリップ・スパーク】
1951年12月29日、イギリスのロンドンに生まれる。ロンドンの王立音楽カレッジ(RCM)にピアノ、トランペット、作曲を学び、在学中から主にブラス・バンド(サクソルン属を中心とする金管楽器と打楽器によるバンド)のための作品を発表。BBC放送の委嘱でブラス・バンドのために作曲した『スカイライダー』(1985)、『オリエント急行』(1986)、『スリップストリーム』(1987)の3作で、“ヨーロッパ放送ユニオン(EBU)新作バンド曲コンペ”3年連続第1位に輝き、アメリカ空軍ワシントンD.C.バンドの委嘱でウィンド・バンド（木管、金管、打楽器からなるいわゆる“吹奏楽”）のために作曲した『ダンス・ム－ブメント 』(1995)でアメリカの“サドラ－国際作曲賞”を、大阪市音楽団第90回定期演奏会のために書いた『宇宙の音楽』ウィンド・バンド版(2004)で同じくアメリカの“NBAレヴェリ賞”を受賞。世界的な活躍がつづいている。

Piccolo (double: Flute)
Flutes (I、II)
Oboe (double: English Horn <opt.>)
Ｅ♭ Clarinet
Ｂ♭ Clarinets （I <div.>、II <div.>、III <div.>）
Ｅ♭ Alto Clarinet
Ｂ♭ Bass Clarinet
Bassoon
Ｅ♭ Alto Saxophones （I、II）
Ｂ♭ Tenor Saxophone
Ｅ♭ Baritone Saxophone
Ｂ♭ Trumpets （I、II、III、IV）
F Horns (I、II、III、IV）
Trombones （I、II、III）
Euphoniums <div.>
Tubas <div.>
Double Bass
Timpani
Mallet Percussion
(Xylophone、Glockenspiel、Vibraphone)
Percussion
(Snare Drum、Bass Drum、Clash Cymbals、Suspended Cymbal、Triangle、Tambourine、Wood Block、Mark Chimes)